アルミニウム合金製ドーム屋根を有するPCパネタンクの施工報告(阿武山配水池2号池築造工事)

はじめに

本工事の目的は、昭和60年に既設阿武山配水池(1号池)の供用が開始され、1池運用では今後の経年劣化に伴う修繕等を行う必要が生じた場合に対応できないことから、2号池を築造することで現有施設を含めて健全かつ長期間使用可能とするためです。
配水池の構造は、耐震性が確保された円形PCパネタンクの自由支承構造(*)です。
本稿は、工事の本体部分であるPC配水池築造工事に関する施工報告です。

図-1 阿武山配水池位置図

工事概要

工事名阿武山配水池2号池築造工事
発注者高槻市水道事業管理者
所在地大阪府高槻市大字奈佐原地内 阿武山配水池
工期平成29年10月26日~平成31年02月08日
実施期間平成29年10月26日~平成31年01月31日
工事概要 PC配水池築造工事
基礎形式 PHC杭基礎(杭長6.0m:108本、4.0m:4本)
配水池構造形式プレキャストパネルPC円形タンク
支承形式自由支承構造(*)
配水池有効容量V = 2,000m3
配水池有効水深H = 8.0m(H.W.L +155.70 L.W.L +147.70)
配水池内径D = 17.9m
屋根構造アルミドーム構造(D = 14.2m)
緊急遮断弁室築造工事
場内配管工事
場内整備工(側溝工、舗装工、他)
電気計装設備工(電線布設、計装盤改造工、他)
図-2 阿武山配水池平面図
図-3 2号配水池標準断面図
写真-1 着工前(右手に既設1号配水池)

工事内容

PC配水池築造工施工フローチャート

図-4 PC配水池築造工施工フローチャート

杭基礎工

配水池の基礎は、現状地盤(FH147.70)より下方4.0~5.0m程度は砂礫と粘土質が混在する軟弱な地層であり(N値20程度)、PHC杭で施工しました。
杭長は、支持層までの根入れを満足する6.0m(配水池ピット部は4.0m)です。
実施工での支持層確認は、オーガ掘削時のトルク値にて管理し、設計で想定している深度で必要なトルクが確保されているかを全ての杭(112本)で確認しました。

基礎版工

杭基礎完了後、掘削整地して杭頭部の露出および砕石・均しコンクリートを施工し、杭頭部にパイルスタッド鉄筋を溶接しました。
杭施工に先立ってセメントミルクと杭本体との縁切りを容易とするために縁切り材(ミルクトレール)を使用して施工し、杭頭補強筋を配置する空間を確保しました。
基礎版コンクリートは、予定数量でV=200m3であり、生コン車延べ48台がスムーズに現場に出入り可能となるように配車を計画し打設しました。

底版工

基礎版の上に底版を施工しました。
底版には、自由支承構造(*)の要である止水板および耐震ケーブルをコンクリート打設に先立って配置しています。

(*)
自由支承構造とは、側壁下端の回転および水平方向変位を許す側壁下端と底版との結合構造です。
底版に設置されたラバーパッド上に側壁を構築し、ラバーパッドのせん断変形を利用して水平方向の変形を可能としています。
地震時における水平力は耐震ケーブルにより抵抗させます。
本配水池で採用している自由支承構造を下図に示します。

図-5 新設2号池の自由支承構造図
写真-12 底版コンクリート散水養生状況

底版コンクリートの施工は4月でしたが、外気温の上昇と昼間の直射日光がコンクリートの養生に影響することが懸念されました。
そこで、配水池ピットに水を溜め、水中ポンプと散水孔を空けたホースを配置して常時散水・湿潤養生を実施しました。

側壁工

パネタンクの側壁は、配水池場内に製作台を設置しその上で側壁パネル部材を製作します。
製作台は6基設置しました。
その際、工事車両進入スペースの確保、側壁パネル部材の架設時のクレーン作業半径の確保、架設作業時の既設構造物との離隔距離等を考慮して製作台位置を決定しました。
製作台1基で製作する側壁パネル枚数は、施工性を考慮して最大で6枚(高さ約1.0m)とし、全部で32枚製作しました。

側壁パネル部材の側面にKKシートを設置して、脱枠後のコンクリート表面の目粗し処理としました。
これにより、間詰めコンクリートとの打継面に対する止水性の向上を図っています。

写真-17 コンクリート保温養生状況

パネタンクの特徴として基礎版・底版の施工と並行して側壁パネルの製作が可能なため、底版完成後側壁パネル部材を架設すれば間詰め部の施工のみとなるので、側壁をすべて現場打ちで施工する場合と比べて工期の短縮が可能です。
本工事では2週間程度の短縮効果があったと推察します。
側壁パネル部材の製作は、2月に開始しました。阿武山配水池は高所にあり、特に夜間の冷え込みが厳しかったため、各側壁パネル部材製作後に、ジェットヒーターを配置してブルーシートで囲んでコンクリートの保温養生を行いました。

側壁パネル部材の架設は、50tクレーンを用いて行いました。
クレーンの段取り替えが少なくなるように、配水池の入口近くの製作台上の側壁パネル部材から架設を始め、最も奥の製作台で終わるように計画しました。
側壁パネル部材の架設は、10枚~11枚/日の進捗で、32枚を3日間で架設完了しました。

製作した側壁パネル部材を底版の上に架設したのち、隣接する側壁パネル部材間に間詰めコンクリートを打設して側壁を構築します。
間詰め部の鉄筋・シースを組立て、PC鋼より線を挿入したのちに間詰め部の型枠の組立を行いました。
間詰めコンクリートの打設は、打込み高さが2mを超えないように型枠の途中に打設孔を設けて実施しました。
また、間詰めコンクリートには膨張材を添加し、コンクリートのひび割れの発生を抑制し止水性の向上を図りました。

PC工

間詰めコンクリートのプレストレスを与えてよいコンクリート強度の発現を確認し、横方向に両引き緊張(CCL工法:1S19.3)にてプレストレスを導入しました。パネタンクのPC鋼材の配置は、自由支承構造であるため横方向にのみ配置します。
固定支承構造で場所打ちで側壁を構築する場合と比較して、縦方向のプレストレス(縦締めPC鋼材、一般的にPC鋼棒)が不要であり、その分壁厚を薄くすることが可能となります。
プレストレス導入後は、定着端部を処理した後にノンブリーディング低粘性型のグラウトを注入して、コンクリートとの一体化とPC鋼より線の防錆性能を確保しました。

歩廊工

側壁プレストレス導入後、内部支保工を組立てて歩廊コンクリートを構築しました。
コールドジョイントが発生しない様に打ち重ね時間を管理してコンクリートを打設しました。
歩廊コンクリートの養生は、養生マットを設置し歩廊全面に水を張って湿潤養生を行いました。

塗装工

歩廊コンクリートの脱枠後、外面塗装工、歩廊防水工、内面防食塗装工を施工しました。
内面防食塗装は、歩廊と側壁部を先行施工し底版部は後述するアルミドームの設置完了後に施工しました。

アルミドーム工

本工事のアルミドームの組立は、配水池場内の敷地が狭いため2号池内部(底版上)で行いました。
アルミドーム全体の構造を構築した後、25tクレーンを用いてアルミドームを上架しました。
アルミドームが歩廊部立ち上り部を超えたところで上架を止めて、サポートレグ(脚部)を取付けてから歩廊立ち上り部の天端に埋設しておいたアンカーと接合しました。
アルミドーム設置後は、端部カバープレートの取り付け、添接板周囲のシール作業を実施しました。

塗装工(底版部)

アルミドームの上架後に内面防食塗装(底版部)の施工を行いました。
屋根が出来たことで配水池内部と外気が隔離されるため、温度・湿度管理はさらに留意しました。
また、送風機を設置して配水池内部の換気および塗装環境の維持に努めました。

おわりに

本工事は、PC配水池築造工事に加えて、緊急遮断弁室築造工事や場内配管工事及び場内整備工事、電気計装設備工事と多岐にわたり、工事を進めていく中で課題も多くありました。
発注者との入念な打合せ、工程調整・施工計画の検討を実施して、無事故無災害で工期内に工事を完了することが出来ました。
最後に本工事においてご指導頂いた発注者および各協力業者に感謝いたします。