宮城県北部地震におけるPCパネタンク調査報告

はじめに

2003年7月26日、0時13分頃、宮城県北部を震源とするマグニチュード5.5(震源の深さ12km)の地震が発生し、宮城県鳴瀬町小野、矢本町矢本で震度6弱を記録しました。
同日7時13分には、ほぼ同じ場所を震源としてマグニチュード6.2(震源の深さ12km)の地震が発生し、宮城県鳴瀬町小野、矢本町矢本、南郷町木間塚で震度6強を記録しました。
同日16時56分にもほぼ同じ場所を震源としてマグニチュード5.3(震源の深さ12km)の地震が発生し、宮城県河南町前谷地で震度6弱を記録しました。
地震による災害は、道路面の亀裂、陥没は無数あり、家屋の倒壊も多く、今回の地震の大きさを物語っています。
宮城県内には、弊杜が築造したPCタンクが4基あることから、阪神大震災と同様に速やかに調査担当者を現地に派遣し、地震の影響や経年変化について迅速に調査を行ない、関係部署に調査報告書の提出を行いました。
以下に、その内容について紹介いたします。

PCタンクの設計仕様

名取市 みどり台配水池完工年月平成 7年10月
形式固定工法(同心円)
容量
800m3
内径11.30m、16.40m
有効水深4.00m
仙台市 加茂配水池完工年月昭和53年 3月
形式プレロード工法(弾性支承)
容量2000m3
内径18.00m
有効水深8.00m
JR東日本 仙台新幹線基地工水受水槽完工年月昭和54年 8月
形式プレロード工法(同心円)・(弾性支承)
容量3000m3
内径19.10m、27.10m
有効水深5.50m
利府町 簡易給水施設事業配水池完工年月昭和54年 5月
形式プレロード工法(同心円)・(弾性支承)
容量1500m3
内径13.50m、19.30m
有効水深5.50m

調査報告

調査は、地震時による影響、経年変化による影響について行ないました。

調査の内容

調査方法は目視による外観調査を主体に、壁体・屋根・PC定着部の本体構造物の状況調査、昇降設備、手すり、避雷針等の付属物の状況調査について行ないました。

調査結果

以下に、関係部署に報告した調査結果を記載します。

名取市 みどり台配水池

地震時の影響について、異常は見られなかった
経年変化によるものは、現状で特に問題はなかった

避雷針手摺弁室
排水管昇降設備配管設備
人孔電気室排水溝
換気孔ポンプ室場内舗装
水位計
付属物 点検箇所 (-:項目なし ○:異常なし ×:異常有り)
点検箇所基礎・床版壁体屋根PC定着部
ひび割れ
剥離
鉄筋露出
漏水
遊離石灰
塗装
防水
補修経歴なしなしなしなし
本体構造部 (-:項目なし ○:異常なし ×:異常有り)

壁体下部とドームリング部の一部に雨水等による汚れが見られましたが、本体及び付属物には現状では問題がありませんでした。

仙台市 加茂配水池

地震時の影響について、異常は見られなかった
経年変化によるものは、現状で特に問題はなかった

避雷針手摺弁室
排水管昇降設備配管設備
人孔電気室排水溝
換気孔ポンプ室場内舗装
水位計
付属物 点検箇所 (-:項目なし ○:異常なし ×:異常有り)
点検箇所基礎・床版壁体屋根PC定着部
ひび割れ×
剥離×
鉄筋露出
漏水
遊離石灰×
塗装
防水
補修経歴なしあり 外部塗装あり外部塗装あり外部塗装
本体構造部 (-:項目なし ○:異常なし ×:異常有り)

屋根部仕上モルタルの一部にひび割れ、剥離が見られますが、現状では特に問題はありませんでした。

JR東日本 仙台新幹線基地工水受水槽

地震時の影響について、異常は見られなかった
経年変化によるものは、現状で特に問題はなかった

避雷針手摺弁室
排水管昇降設備× 錆点在配管設備
人孔電気室排水溝
換気孔ポンプ室場内舗装
水位計
付属物 点検箇所 (-:項目なし ○:異常なし ×:異常有り)
点検箇所基礎・床版壁体屋根PC定着部
ひび割れ
剥離
鉄筋露出
漏水
遊離石灰
塗装
防水
補修経歴なしあり外部塗装あり外部塗装あり外部塗装
本体構造部 (-:項目なし ○:異常なし ×:異常有り)

付属物の外部螺旋階段には、錆が発生していましたが、本体及び他の付属物は特に問題がありませんでした。

利府町 簡易給水事業配水池

地震時の影響について、異常は見られなかった
経年変化によるものは、現状で特に問題はなかった

避雷針手摺弁室
排水管× 取付金具錆昇降設備× 錆点在配管設備
人孔電気室排水溝
換気孔ポンプ室場内舗装
水位計
付属物 点検箇所 (-:項目なし ○:異常なし ×:異常有り)
点検箇所基礎・床版壁体屋根PC定着部
ひび割れ× 一部亀甲状
剥離
鉄筋露出
漏水× 亀甲状跡
遊離石灰
塗装
防水
補修経歴なしあり 外部塗装あり 外部塗装なし
本体構造部 (-:項目なし ○:異常なし ×:異常有り)

本タンクは、吹き付けモルタルの中性化調査も実施し、PC硬鋼線への影響も調査しましたが異常ありませんでした。
壁体吹付モルタルの一部に亀甲状のひび割れ、付属物である雨樋振止金具、外部螺旋階段に錆が発生していましたが、現状では特に問題はありませんでした。

あとがき

水道は、国民生活や産業経済活動に欠くことのできないライフラインとしての使命を果たすために、地震や渇水にも強い高水準な施設整備を提供することが重要となります。
近年、トイレの水洗化をはじめとする生活様式の変化から、水道水の使用量も増加し、安全で安定した水道水の供給が求められており、PCタンクはこのための施設として、かかせないものになっています。
今回の地震に対して構造的に問題がなかったことは、PCタンクが高水準な施設であることを実証できたものと考えています。
特に、昭和53年にプレロード工法で築造されたタンクには、25年という歳月を経ているにもかかわらず、地震による影響が全く見られませんでした。
このことは、耐震性を取り入れた弾性支承の効果ではないかと考えられます。
今後も、緊急時における速やかな調査や対応を行ない、国民生活にとって重要なライフラインの安全性のな確保に努めていきたいと思います。