富山高架西BL新設他2工事施工報告

はじめに

本工事は、「富山駅付近連続立体交差事業」の一つとして、富山高架西BL新設他2工事の内のA1-P1径間のPCT形桁工(ポストテンション方式T桁3本・橋長約33.0m)を行いました。

当工事(富山駅付近連続立体交差事業)の目的

富山駅付近は、あいの風とやま鉄道により南北に分断されており、この鉄道と交差する2本の道路が2車線しかないため駅南北間の交通が阻害され、また駅周辺の効率的な土地利用と一体的な発展に支障をきたしています。
そこで、鉄道を高架化することにより道路の新設や拡幅が行われるとともに、駅部での南北を連絡する歩行者専用通路の整備や北口の路面電車化された富山港線(富山ライトレール線)と南口の既存路面電車との接続など南北一体となった街づくりが推進されます。

図-1 富山駅付近連続立体交差事業範囲図 ※富山市 OFFICIAL WEBSITE 引用

工事概要

工事名富山高架西BL新設他2工事(Ⅱ期工事)
施工場所富山県富山市明倫町地先
発注者西日本旅客鉄道株式会社
請負者株式会社熊谷組
工期平成27年6月17日~平成30年9月28日
当社施工時期平成29年5月16日~平成29年9月13日
当社工事内容支承工
PCT形桁工
床版横組工

工事内容

当社の担当した工事は、「富山駅付近連続立体交差事業」の内、富山駅より西側約500mの位置における高架橋を構築する富山高架西BL新設他2工事であり、その中のⅡ期工事におけるA1-P1 径間のPCT桁(ポストテンション方式T桁3本、橋長約33.0m、全幅員5.839m~7.038m、桁高 2.100m)工事を施工しました。
図-2の施工状況図の様に、桁製作台上で1桁ずつ主桁の製作を行い、横取り架設後、床版横組工を施工し、橋梁を構築しました。

図-2 施工状況図

工事の施工は以下の順序で行いました。

支承工

支承工としてゴム支承と鋼角ストッパーの設置を行いました。
ゴム支承は、上部構造と下部構造の接点に設けられる構造部材で、上部構造から伝達される死荷重、活荷重などの鉛直荷重、地震や風などの横荷重を確実に支持して下部構造へ伝達するものです。
また、活荷重の載荷や温度変化などによる上部構造の水平移動、たわみによる支点部の回転変位に対しても円滑に追随する機能を持っています。
橋座面上の所定位置に、型枠・鉄筋を組立て、無収縮モルタルを打設し、その上にゴム支承の据え付けを行いました。

鋼角ストッパーは、橋梁の主桁(上部構造)と橋脚・橋台(下部構造)の間に設置し、大地震時などで設計上許容された移動量以上の桁のズレ(変位)の発生を抑え、支承の破壊や橋の落下を防ぐ装置です。
鋼角ストッパーの設置は、主桁の横取り架設時に支障を来さない様に、主桁の架設が完了した箇所から順番に設置を行いました。
図-3の様に、鋼角ストッパー内部はコンクリートを、下部構造箱抜部は無収縮モルタルを充填しました。

PCT形桁工

PCT形桁工フロー(底型枠組立~主ケーブル緊張)
PCT桁工の底型枠組立から主ケーブル緊張までのフローを以下に示します。
主ケーブル緊張作業完了後、主桁の架設を行います。本工事は3主桁の施工の為、以下の工程を3回繰り返し、施工を行いました。

底型枠組立

底型枠の組立は、桁製作台における山留H鋼の上に、端太角(□100mm)、横材(□60mm)、合板(12mm×2枚)を設置しました。
主ケーブル緊張による主桁の反り上がりを考慮し、支間中央部で38㎜の下げ越しを行いました。
桁端部は台座コンクリートを打設し、主ケーブル緊張時の桁の短縮量(移動量)を拘束しない様に、合板と台座コンクリートの間に敷鉄板(6mm×2枚)を設置し、緊張時スライド出来る様に配慮しました。

下側鉄筋組立・主ケーブルシース組立

鉄筋組立作業は図-4の順序で行いました。
組立時は底型枠の両脇に転倒防止としてアングル(約2m間隔)を設置し、組立を行いました。
下側鉄筋組立後、主ケーブルシースの組立を行いました。
主ケーブルシースはPE管を使用し、1m間隔に棚筋を設置して、所定の位置に配置しました。

側枠建込

下側鉄筋・主ケーブルシース組立完了後側枠の建込を行いました。
建込はラフタークレーンを使用し、型枠目地の隙間が生じない事を確認しながら作業を行いました。

写真-8 側枠組立状況
打設足場組立・上側鉄筋組立

側枠建込完了後、打設足場組立・上側鉄筋組立を行いました。

主ケーブル挿入

主ケーブルは、まず所定の長さに切断された1ケーブル(12本のストランド)をコイル状に束ねた状態で納入し、A1桁端後方に設置したターンテーブル上に配置しました。続いて、P1桁端後方に滑車をセットし、これにガイド線を通して、主ケーブル先端と固定し、ラフタークレーンにてガイド線を引き上げ、シース内に引き込んで挿入しました。

写真-10 主ケーブル挿入状況
コンクリート打設・養生

主桁中央付近に設置したポンプ車を使用して、コンクリート打設を行いました。
締め固めは棒状バイブレーターを用いると共に、下フランジハンチ部の気泡を減少させる為に側枠両側に型枠バイブレーター(片側4台)で締固めを行いました。
また、型枠点検者を両側に1名ずつ配置し、ハンマーによる打音確認をしつつ打設を行いました。
コンクリート養生は、養生マットを敷き、ハイウォッシャーでの散水の他に、穴を開けたチューブに通水し、常時散水を行いました。

主ケーブル緊張

あらかじめ計画した緊張可能となるコンクリートの強度が発現された後、主ケーブルの緊張を行いました。
定着工法はフレシネー工法12T13を用いて、両引き緊張にてプレストレスを導入しました。
緊張管理はμ管理(摩擦係数をパラメーターとする管理手法)で実施し、すべてのケーブルで異常なく所定のプレストレスを与える事が出来ました。

写真-15 主ケーブル緊張状況

PCT形桁工(主桁架設)

緊張作業完了後、主桁の横取り・架設を行いました。
架設作業は桁両端部に複動型油圧ジャッキ(50t、ストローク200mm)を用いてジャッキアップを行い、桁横移動金具を桁下にセットし、油圧ジャッキ(20t、ストローク500mm)にて横取りを行いました。

図-7 主桁横取り状況図

床版横組工

床版横組工フローは以下の通りとなります。

主桁3本の製作・架設完了後、横桁部・間詰床版部の鉄筋・型枠を組立て、横締めPCケーブルを挿入し、コンクリート打設を行いました。
養生は主桁と同様にチューブを使用し、常時散水を行いました。

横桁・間詰床版部コンクリート打設後、所定の強度を確認して、横締めPCケーブルの緊張作業を行いました。
定着工法はCCL工法1S21.8を用いて、片引き緊張にてプレストレスを導入しました。
横締めPCケーブルを緊張する事により3桁を一体構造とする事ができます。

横締めPCケーブル緊張作業完了後、張出床版部・地覆部・ダイヤフラム部の鉄筋・型枠組立をし、コンクリート打設を行いました。

主ケーブル・横締めケーブルグラウト注入

主ケーブル・横締めケーブル緊張作業完了後、シース内にグラウト注入を行いました。
これは、コンクリートとPC鋼材との付着を確保すると共に、PC鋼材を腐食から保護する為に行います。
主ケーブルはノンブリーディング高粘性型、横締めケーブルはノンブリーディング低粘性型のグラウトを注入しました。

おわりに

本工事は、営業線上下線の間での工事であった為、列車通過1分前からクレーン・ポンプ車のブームの旋回が禁止され、また、ユニックによる積込み作業が禁止されている等、営業線近接作業の特殊な条件での施工となりました。
また、資材の飛散が即大きな事故に繋がる為、常時飛散養生に注意し作業を行いました。
その結果、発注者様、請負会社様、協力会社様のご協力もあり、無事故無災害で作業を終える事が出来ました。
関係者の皆様にはこの場を借りて御礼申し上げます。