液状化抑制対策 ボックスカルバートの浮上防止

まえがき

和歌山県内の化学工場で使用されているボックスカルバートの液状化抑制対策として、アースドレーン工法が採用されました。

アースドレーン工法について

液状化抑制対策

液状化抑制対策は基本的に液状化の被害を少なくするため、構造物の性能を向上させ液状化に耐えうる物にする方法と液状化の発生そのものを抑える方法、さらに地盤の性質を改良する方法、液状化する条件を改良する方法などさまざまな分類があります。
本工法は、液状化抑制対策工法の内で間隙水圧消散工法に分類され、地盤に排水材(人工ドレーン)を設置することにより水平方向の排水距離を短縮し、地盤の排水性を高めることにより地震により発生する過剰間隙水圧を速やかに消散させ、地盤が液状化するのを効率的に防止・抑制するために地盤の改良を行う工法であります。
本工法は対象となる構造物に大きな改良をするのではなく、対象となる構造物に直接、限定して施工するため、周囲の環境の変化も最小限に抑えることができ、効果的な液状化抑制対策と言えます。

技術概要

人工ドレーンの打設は、アースドレーン工法専用のドレーン打設機を使用し、液状化の抑制を図る地盤に所定の間隔を開けてドレーンを地中に埋設します。
ドレーンパイプの設置位置は地盤の土質条件、要求性能などにより適切に設定します。

適応対象物

適応対象物は、液状化現象によって被害を受ける、新設又は既設の構造物全般に渡りますが、既存の構造物でも現在の状態を支障することなく最小限の施工で対応できます。
また施工中の周囲への影響も最小限に抑えることができます。
例えば、周囲のスペースが限られている建物、鉄塔、電柱など地中の支持力の支えで建てられている長尺高柱物、比重の軽い地中構造物(浄化槽、地下室、マンホール)が考えられます。

マンホールやボックスカルバート等の浮上現象

マンホールは一見、重量の重い物と思われがちですが中が空洞となっているため、比重は軽く、地下水の高い場所では常に大きな浮力がマンホールやボックスカルバート等に作用しています。
地震の液状化現象は、鉛直土圧による地盤と当該構造物の摩擦力を減少させて、さらに地盤中の過剰間隙水圧は大きな浮力を発生させるので、構造物を安定させる力と揚力とのバランスが崩れて構造物が浮上します。
本工法はマンホールやボックスカルバート等の周囲に人工ドレーンを打設する事により当該構造物周囲の液状化を抑制し、構造物と地盤の摩擦力を保持し、揚力が勝らないようにして構造物の浮上を抑制するものです。

アースドレーン工法の特徴

  • 無排土圧密
  • 高周波振動
  • 工程の短縮
  • 施工時の環境
  • 狭小な作業範囲での施工が可能
  • 短期間で打設可能

使用する人工ドレーン材の特長

  • 埋設するドレーンは排水機能に優れている。
  • 集水力はありながら地盤内の土粒子の流動は防ぐ。
  • 地中内での変形がほとんどない。
  • 経時劣化、変形等の発生がない。

工事概要

当工事は、工場間で使用されているボックスカルバートの液状化抑制対策として、直径φ100mmのドレーン材を91本打設し地震時の浮上安全率を向上する工事です。

施工数量
平面図
平面図
断面図

施工状況

鋼製ケーシング圧入工

人工ドレーン埋設部の硬質土層を無排土圧入するため、ドレーン打設機により鋼製ケーシング(外径140mm)を先行圧入します。
この時、地下水圧により、鋼製ケーシング内に先端より土砂が入り込まないように、水を注入します。圧入完了後、先端コーンを内部ロッドにより引き抜きます。
この現場では斜打ちを行いました。

人工ドレーン材建込工

人工ドレーンの先端にビットを装着しビスにて固定します。
ケーシング内に建込み、ドレーン接続箇所には接続ジョイントを装着します。
ジョイント箇所をフィルターで覆い固定します。
設計の位置、高さに人工ドレーン材を設置して完了です。

ケーシング引抜工

鋼製ケーシングを約1m引き上げ、人工ドレーンの残置固定を確認し、共上がりが無いことを確認しながら、鋼製ケーシングを回収します。

ケーシング引抜工

頭部排水処理工

埋め戻し状況

最後に

当工事は化学工場内で供用されているボックスカルバートの浮上防止工事であり、工場内の構内規則もありましたが、交通量は比較的少なく、元請けや施主のご協力もあり施工日数約2週間と短期間で安全に完成いたしました。