
| No.212 滑材アルティ−Kはどこまで送れるのか? |
今回、東京事務所の大洲工事において得られた、滑材注入時の各注入距離に村する吐出圧、注入圧、流量の測定データを基に、「滑材アルティ−Kの注入最大距離」を予測する事にしました。
滑材注入設備・その他の条件は各現場により異なり、一律に比較はできないと思いますが、参考にはなると思います。
また、同時に「アルティ−Kの配合を増量し、粘性を上げた場合はどうなるのか?」ということで、実験的に配合を25%程度増量して滑材注入も行ったので、そのデータも分析したいと思います。
- 推進距離: 680m
- 推進管径:1200mm
- 注入装置:ULIS
- 使用滑材:アルティ−K(配合:約20%減量、約25%増量)
- 滑材配管径:2インチ(鋼管)
- 注入ポンプ:スクイズポンプ
- 流量:10〜20L/min
- ポンプ吐出口〜坑口:26m(立坑深さ:約10mを含む)
3−1.測定方法
当現場には滑材注入装置として「ULIS」を設置したので、その中央操作盤に表示される吐出圧、注入圧、平均流量、その他条件をデータシートに記録できました。
ちなみに、吐出圧とは滑材注入ポンプ部で測定された圧力の事で、注入圧とは滑材配管の先端部で測定された圧力のことです。
3−2.データの分析
今回のデータを分析する為に以下の処理を行いました。
- ◎グラフ
- X軸に「注入距離」、Y軸に「吐出圧、注入圧」をとり、平均流量が10、15、20L/minのデータをグラフにプロットしました。
- その傾向を見る為に、回帰分析を行い、勾配と切片を求めました。
- ◎滑材注入最大距離の予測
- 吐出圧の上限値を想定して、描いたグラフより、アルティ−Kの滑材圧送最大距離を求めました。
- 吐出圧の上限値の設定は、最も注入ポンプの吐出口に近くて許容圧力の低いものを選定し(今回はULISの電動バルブの許容圧力:1MPaを選定した)、測定データのバラツキを考慮して、吐出圧の上限値を0.8MPaとして算定しました。
- ◎アルティ−Kの配合が20%減量時と25%増量時の比較
- アルティ−Kの粘性を上げた時と下げた時とでは、注入距離にどの位の差が表われるのかをみました。
これより、以下の事がわかりました。
1.図−1より、注入孔までの距離が長くなっても、注入圧はあまり変化しない。

図−1注入距離と注入圧、吐出圧の関係
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2.図−1より、圧送距離が長くなると、ポンプ吐出圧は比例的(Y=aX+b)に上昇する。
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流量
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最大距離 |
回帰分析
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| (L/min) |
(m) |
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10
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2200
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y=0.00065x+0.03 |
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15
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2050
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y=0.00028x+0.20 |
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20
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1150
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y=0.00027x+0.19 |
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表−1大洲工事の流量別の最大距離
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3.図−2よりわかった、大洲工事の条件下での滑材注入の最大距離を表−1に示す。ただし、アルティ−Kの配合は20%減量した時のものである。流量が10L/min、15L/min時の最大距離の差と、15L/min、20L/min時の差に大きな開きが表われているが、データの不足が考えられる。今後、現場での調査が必要。

図−2 同一条件下での滑材注入の最大距離の推定

図−3 同一条件下での配合別、滑材注入の最大距離
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4.図−3より、アルティ−Kの配合を25%増量時でも、約950m送れる事がわかった。ただし、これも流量が平均10L/minの時である。
大洲工事での推力上昇グラフを図−4に示します。数箇所で推力の急上昇が見られますが、これは地山の変化等による初期推力の上昇と思われます。その後、十分な滑材注入量と注入部の管理を行った結果、推力が低減されていることがわかると思います。
しかし、滑材注入はアルティ−Kの配合を20%減量させ、粘性を下げて行われていました。これにより、アルティ−Kのポリマー(アルティ−Kを構成するもの、透明な粒)の微妙な大きさが形成されていない事が考えられます。今回の実験でアルティ−Kの配合を25%増量させても、滑材注入は最大950m送れる事がわかった為(勿論、流量を上げた場合は、滑材注入の最大距離も短くなると思われる)、当工事でもアルティ−Kの配合を標準配合「1袋(1.5kg)/200L」で行えば、アルティ−Kの理想的なポリマーが形成され、周辺地山への逸泥も無く、更なる推力の低減も考えられたと思います。
長距離推進では、アルティ−Kは粘性を下げないと滑材注入が行えないとよく聞きますが、「注入を平均的に行うことによって、流量をできるだけ下げ、全延長の注入量の十分な管理」を行えば、推力の上昇に悩まされず安心して工事が行えると思います。
今回はULIS装置の流量管理機能と圧力管理機能を使って、アルティ−Kの注入時の数値データを取り、それを分析することによって流体輸送の実験式を仮定することから行いました。
一般的に流体は、「ニュートン流体」と「非ニュートン流体」に分類され、非ニュートン流体の中にビンガム流体というものがあります。ニュートン流体とは、水、空気、油など、あまり粘りのない流体のことです。逆に、ビンガム流体とは泥水、滑材、ペンキなど、粘りがある為にせん断応力がかかるものです。
滑材のようなビンガム流体の流体輸送の圧損は、送るものの性質によっては、理論的な計算式では算出できないものが多く、今までは経験をもとにした計画が現場では行われていました。今回はアルティ−Kの粘性を1050mPa.sと2300mPa.sで行いましたが、同じ粘性でも違う性質の流体ではまったく違う圧損になります。このように、それぞれの流体で実験式を仮定することが現場の計画上必要となると思います。
まず、手始めに、アルティ−Kからはじめた今回の測定は今後、他の流体の測定データとその性質の数値の関連が捉えることができれば、理論式の構築に向けて広がりを見せることになると思います。
図−4 大洲工事推力上昇グラフ
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