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土木本部PC工事部計画課課長:尾崎 智
設計本部設計部 課長補佐:堀川智司
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近年、土木構造物においては、構造物の安全性・耐久性確保と建設コスト縮減、並びにそれらのための技術開発が社会的要請としてとみに叫ばれています。このような背景の中で、鋼とコンクリートの材料特性を生かした複合構造物(表−1参照)の建設が増加する傾向にあり、特に厳しい環境条件や施工条件の下で構築される構造物に採用され始めています。
表−1 複合構造の分類
| 複 |
{ |
合成構造 |
異種の材料で部材断面が構成される |
| 合 |
例) |
波形ウェブ橋、複合トラス橋、合成桁橋、H鋼埋め込み桁橋 等 |
| 構 |
混合構造 |
異種の部材で構造物が構成される |
| 造 |
|
例) |
側径間のコンクリート桁と中央径間の鋼桁とを剛結した混合橋 等 |
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S.P.C構造は合成構造に属する |
橋梁構造物に限ると、波形ウェブ橋、複合トラス橋、合成桁橋、H鋼埋め込み桁橋、混合橋など多種の複合橋梁が施工されています。鋼とコンクリートによる複合橋梁はその優れた構造特性により鋼橋、コンクリート橋につぐ第3の構造としての位置づけが確立しつつあり、今後は様々な組合せによる構造が提案されその分野は拡大していくと考えられます。
1960年代初めに当社が独自に開発したS.P.C工法による橋梁は、まさしく複合橋梁そのものであり、将来は多種にわたる複合橋梁の中で一つの分野を形成するものであろうと考えます。複合橋梁を構築するS.P.C工法は、橋梁構造物における技術革新の流れに適応した工法であり、S.P.C橋梁の実現に向けて、鋭意技術開発を推進しております。
今回、設計手法の整備と工法の斬新な改善とを図るため、S.P.C部材をとりあげ、その性能確認実験を行いました。
S.P.C工法とは、鋼トラス桁を埋設したプレストレストコンクリートを場所打ちで施工して、合成構造橋梁を支保工なしで架設する工法です。この工法は連続構造橋梁に適用することで優位性が発揮され、橋梁本体の合成構造の一構成要素である鋼トラスを架設時に有効に利用します。その特長としては次のことが挙げられます。
1)鋼とプレストレストコンクリートとの合成構造であるため、鋼、PC鋼材及びコンクリートの長所を最大限に活用し、靭性に富んだ高性能の橋梁を建設することができます。
2)橋梁の架設時に鋼トラスを有効に活用しており、架設法を工夫することで、従来の張出し架設法の場合に発生する過大な中間支点上の曲げモーメントを低減できます。これにより、中間支点上における桁高の増大の抑制、プレストレス量の低減、コンクリートをはじめとする使用材料の節約、橋梁自重の低減などが図れます。橋梁の軽量化により、下部工工費も削減できます。
3)鋼トラスに足場や型枠などの架設機材を取り付けコンクリートを打設するため、さらに、これらの荷重はすべて鋼トラスが担うため、地上からの支保工を必要とせず、架設機材の簡略化、施工の安全・合理化、工期短縮が図れます。
以上のように、S.P.C工法は、橋梁の高品質、施工の安全・合理化、工期短縮、コスト縮減を実現することができ、また、市街地や交通量の頻繁な道路との交差地点、渓谷・沼地などの架橋に有利性を発揮できます。
写真−1 性能確認実験
1)実験目的
鋼桁をプレストレストコンクリートに埋設した橋梁は国内において実績が数件しか無く、その力学的特性はまだ十分に解明されていません。そこで、S.P.C部材としての、鋼トラス桁とコンクリートとの一体性、曲げ・せん断及び疲労に対する性状・耐力を実験により確認することを目的として実施しました。
2)ご指導していただいている先生方
- 大阪工業大学工学部都市デザイン工学科・小林 和夫教授
- 大阪工業大学工学部都市デザイン工学科・井上 晋教授
3)実験場所、期間
- 実験場所:大阪工業大学八幡工学実験場 構造実験センター
- 実験期間:2002年7月22日〜8月30日
- 供試体製作場所:機動建設工業株式会社 枚方倉庫
4) 供試体の種類
- 1.外ケーブル曲げ耐力確認供試体 1体
- 2.外ケーブルせん断耐力確認供試体 1体
- 3.外ケーブル疲労・曲げ耐力確認供試体 1体
- 4.内ケーブルせん断耐力確認供試体 1体
- 合計4体
5)供試体詳細
- 寸 法
- 桁 高:0.750m、全 幅:1.000m
- 桁 長:8.750m、支間長:8.250m
- ウェブ厚:0.200m
- 上・下床版厚:0.140m
- 重 量:102.5kN

図−1 供試体断面図
- 使用材料
- コンクリート:σck=36N/mm2(早強セメント使用)、骨材最大寸法15mm
- 鉄 筋:SD345
- 主鉄筋:D10、D16
- スターラップ筋:D10
- PC 鋼 材:
- 外ケーブル:F170TS Pt=1155kN/本、n=2本/桁
- 内ケーブル:1T21.8(SWPR19L) Pt=352kN/本、n=4本/桁
- 鋼トラス桁:SS400
- 上弦材、下弦材:CT100×100×5.5/8 A=13.33cm2
- 鉛直材、斜 材:L40×40×5 A=3.755cm2
6)試験概要

図−2 荷重載荷要領図
7)測定項目
- コンクリート
- 軸方向ひずみ(曲げ、付着)、せん断ひずみ(せん断)
- 鉄 筋
- 主鉄筋軸方向ひずみ(曲げ)
- スターラップ筋軸方向ひずみ(せん断)
- 鋼トラス桁
- 上弦材・下弦材:軸方向ひずみ(曲げ、付着)
- 鉛直材・斜 材:軸方向ひずみ(せん断)
- PC鋼材
- 軸方向ひずみ(張力)
- 変 位
8)実験結果速報
実験値はいずれも設計値を大きく上回る結果となりました(表−2)。目視 による性状ではひび割れが分散して発生しているのが確認でき(写真−2、3)、鋼とコンクリートの付着(一体性)がかなり有るものと推測できます。また鋼材が降伏してからコンクリートが破壊するまでの変位が大きいため(図3〜4)、靱性に富んだ構造だと思われます。疲労試験は活荷重相当の繰り返し載荷を200万回実施しましたが、ひび割れの発生は見受けられませんでした。また、繰り返し載荷後に静的曲げ耐力試験を行いましたが、十分な耐力が確認出来ました。
なお平成2002年8月21日にせん断耐力確認を、官公庁、建設コンサルタント、建設会社等総勢83名の方々の出席のもとに、公開実験として行いました。
| 供 試 体 |
破壊荷重(kN) |
最大変位(mm) |
| 設計値 |
実験値 |
| 1.外ケーブル曲げ耐力試験供試体 |
1417kN
(1.000) |
1642kN
(1.159) |
134 |
| 2.外ケーブルせん断耐力試験供試体 |
2636kN
(1.000) |
2729kN
(1.035) |
143 |
3.外ケーブル疲労・曲げ耐力試験供試体
(疲労試験後) |
1422kN
(1.000) |
1554kN
(1.093) |
115 |
| 4.内ケーブルせん断耐力試験供試体 |
2174kN
(1.000) |
2613kN
(1.202) |
172 |
※最大変位は支間中央部の変位を示しています。
※( )内数値は、設計値を1とした場合の実験値の比率を示しています。
設計値は材料試験結果を基に算出しています。
==ひび割れ発生状況==

写真−2 曲げ耐力試験供試体

写真−3 せん断耐力供試体

図−3 曲げ耐力試験荷重−たわみ曲線

図ー4 せん断耐力試験荷重−たわみ曲線
性能確認実験の結果については、現段階において考察する限り、S.P.C部材は非常に靱性に富んだ高性能な構造であると思われます。今後、測定データを基に詳細な検討を行い、S.P.C構造の性状を把握し、設計手法の確立を進めます。なお、実験は同時にクリープ試験及び鉄筋拘束力確認試験についても実施しており(長期計測)、クリープ、乾燥収縮、および鉄筋拘束効果についても検証していく予定です。
S.P.C橋梁は、PC橋が比較的苦手としている最大支間長40〜80m程度の中規模橋梁を当面は対象としております。既に特許は3件申請しておりますが、今後、国土交通省に新技術の登録を行うとともに、複合・合成橋梁の新しい一分野としての地歩を築きたいと考えております。
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