藤井寺ポンプ場浄水池ほか耐震補強工事 工事報告

はじめに

藤井寺ポンプ場は淀川周辺の浄水場から取水した上水道水を大和川以南へ送水する中継ポンプ場であり、二つの系列(1号池、2号池)を有します。
浄水池は昭和48年に、吸水井は昭和49年に構築されましたが、耐震性能を確保するため先行して2号池(浄水池及び吸水井)の耐震補強を行いました。

工事概要

工事名藤井寺ポンプ場浄水池ほか耐震補強工事
施工場所大阪府藤井寺市川北一丁目
発注者大阪広域水道企業団 東部水道事業所
受注者機動建設工業株式会社   関西支店
工期令和元年11月 6日 ~ 令和 4年 1月31日
工事内容(主たるもの)
耐震補強工(浄水池2号池)
 コンクリート増打工285m3
 あと施工せん断補強筋工2,737本
 伸縮可とう継手工183m
 コンクリート防食工12,063m2
 補修工1式
耐震補強工(吸水井2号池)
 あと施工せん断補強筋工170本
 コンクリート防食工1,590m2
 補修工1式

施工位置図

藤井寺ポンプ場は、大和川と外環状線(国道170号)の交差箇所の北東に位置し、普段は藤井寺市立市民川北スポーツ広場の名称で主に野球用グランドとして市民のスポーツ活動に有効利用されています。
このグランド地下に浄水池があり、南側に吸水井が併設されています。
本工事では1号池を供用した状態で2号池を運転停止して、耐震補強工事を行いました。

図-1 藤井寺ポンプ場位置図

施工フローチャート

図-2 施工フローチャート
図-3 浄水池2号池平面図
図-4 浄水池2号池断面図
図-5 吸水井2号池平面図
図-6 吸水井2号池断面図

施工内容

排水工

施工に先だち浄水池・吸水井(以降:池)内貯留水の排水作業を行いました。
池内はL.W.Lまでは既設の設備を使用して計画的に水位を下げることは出来ますが、それ以降は排水設備がないため池とドレン管で繋がっている排水ピットに排水ポンプを設置して、残水を排水しました。
なお、吸水井については、1号池と2号池とは隔壁で仕切られていますが、ゲート弁を有する開口部があります。
このゲート弁の止水機能が低下していたため、開口部に止水目的としてのコンクリートを打設して、1号池からの流水を防止しました。

調査工

池内の排水完了後、施工用の開口部を設置しました。
開口部には雨水の浸入を防止するため、仮設のコンクリート製止水壁を設置しました。
また、山留鋼材を使用して施工時の進入路を確保しました。

施工前の池内は、コンクリート表面に防食塗装等は施されておらず、経年劣化によりひび割れ、断面欠損、露出鉄筋の錆等が確認されました。
ひび割れは壁及び柱の柱頭部に多く存在し、壁のひび割れは過去に補修された痕跡がありましたが劣化が進んでいました。
断面欠損は一部の壁および柱下部に、露出鉄筋の錆は天井部に多く存在していました。

ハンチ撤去

耐震補強を行うにあたり、コンクリート増打工及びあと施工せん断補強筋工の施工箇所に干渉する既設ハンチは、手ハツリにより撤去しました。
また、浄水池内での撤去数量は57m3程度と多量であったことから、はつりガラの収集・搬出のため、池内にバッテリー式のフォークリフトを入れて、集積作業を行いました。
なお、バッテリー式を用いることで、地下の密閉空間で酸素欠乏環境となることなく安全に作業を行うことが出来ました。

目荒し工(ウォータージェット工:WJ工)

既設コンクリート面とコンクリート防食塗装との付着性を確保するために、コンクリート表面に超高圧洗浄(WJ)により目荒しを行いました。
処理厚さはコンクリート中性化深さ部分の除去を基本としましたが、所定圧力(200MPa)で実施しても既設躯体が硬くて研削できない箇所については付着強さ試験を実施して、コンクリート防食塗装の付着強さが確保できることを確認したうえで、処理厚さを決定しました。

あと施工せん断補強筋工

あと施工せん断補強筋工の工法は、RMA工法(先端斜めカットせん断補強鉄筋)を用いて施工を行いました。
既存構造物の表面からハンマードリルを用いて削孔し、その孔内に水に2~5分程度浸水させたモルタルカプセル(RMAカプセル)を挿入しました。
RMAカプセルを用いることにより、注入するモルタルの現場練り混ぜ作業を簡略化し、作業の軽減が図れたとともに、モルタルの品質安定を確保できました。
その後にせん断補強鉄筋の打ち込みを行いました。
モルタルが硬化した後は、せん断補強鉄筋と既存構造物が一体化し、既存構造物のせん断補強鉄筋を補う事ができます。
また、「RMA」の先端斜めカットせん断補強鉄筋は、一般の鉄筋(異形棒鋼)に下図に示す様に鉄筋先端の斜めカットのみの加工を加えることにより使用でき、特別な部品等を必要としない為、現場への材料供給期間を短縮することが出来ました。

図-7 RMA工法標準配置図

あと施工せん断補強筋工は耐震補強でせん断補強を必要とする箇所にD13の補強筋を用いて施工し、浄水池の底版1,425本、壁1,312本、吸水井の壁170本を施工しました。

図-8 浄水池2号池 せん断補強実施位置平面図
図-9 吸水井2号池 せん断補強実施位置平面図

コンクリート増打工

あと施工せん断補強筋施工完了後、耐震補強で曲げ補強を必要とする箇所に部材厚200mmの増打コンクリートを施工しました。
また、施工順序は、アンカー筋の定着、足場組立、型枠組立、コンクリート打設となります。
池内の施工箇所は底版、壁、柱の部材で、先に底版、壁を施工してから、施工箇所が多い柱については足場組立を同時進行させながら、打設リフト、ポンプ圧送距離、1日打設可能数量等を考慮して打設順序を検討して打設回数10回で施工しました。
なお、柱上端部は200mm高さをコンクリート投入口として残し、最後に無収縮モルタルを注入打設して仕上げました。

図-10 浄水池2号池 曲げ補強部位毎断面図
図-11 浄水池2号池 曲げ補強実施位置平面図

伸縮可とう継手工

浄水池は長辺方向が105m程度と長区間となるので、中央部50m区間を仕切る形で伸縮目地があります。
既設コンクリート内部には外部より地下水が浸入しないように止水板が埋設されていますが、経年劣化により漏水や目地材の破損が発生しているため、新たに伸縮可とう継手を設けました。
伸縮可とう継手は、耐変位量として延び量100mm、沈下量100mm、耐内圧・耐外圧0.1MPaであり、かつ建設技術審査証明認証取得品から製品を選定しました。
製品製作時には工場検査を実施して製品の性能を確認したうえで現地搬入して設置しました。
設置部分のコンクリート防食塗装は先行施工して伸縮可とう継手をその上に重ねて止水性を確保しています。
施工順序は足場上で先に天井・壁を設置し、足場撤去後に底版を設置しました。
ゴムは現地で熱加工して圧着して一体化しました。

図-12 浄水池2号池 伸縮可とう継手設置位置平面図

補修工

調査工にて判明したコンクリートの損傷に対して補修工を実施しました。
実施した補修は止水工、Uカットシール工、ひび割れ注入工、断面修復工、防錆処理工です。
使用材料は水道水に対して影響の少ない材料から選定しました。

コンクリート防食工

目荒らししたコンクリート表面には厚生労働省令第5号水質基準適合品であるポリマーセメントモルタルを使用して下地調整を行い、不陸修正を行いました。
その上に塗布するコンクリート防食はJWWA K 143の規格を満足する無機溶剤型エポキシ樹脂による水道用コンクリート水槽内面防食被覆工法を採用しました。
施工にあたっては、下地調整厚さ、水分量、防食塗装塗布厚さ、付着強さ試験の管理を行うとともに、塗布に使用する刷毛、ローラー等を洗浄する溶剤の混入による水質への影響を抑えるため、池外での洗浄、こそぎ落としを徹底して施工しました。
また、池内の結露が著しく発生していたため、ジェットファーネス(温風機)を用いて池内に温風を供給することで良好な施工環境を維持しました。

洗浄・消毒・排水工

防食塗装完了後

防食塗装完了後に養生期間を3か月確保して乾燥させた後、池内の洗浄、消毒を行いました。
消毒はH.W.L.までの注水に合わせて次亜塩素酸ナトリウムを注入し、残留塩素濃度が貯水直後10ppm以上、24時間後で5ppm以上あることを確認しました。
その後、排水・注水により水を入替え、水質試験(51項目)に合格を確認した後、供用開始となりました。

おわりに

本工事では、浄水池の施工範囲が非常に広範囲であることと、経年劣化による補修実施程度が池内に入ってみないと不明であったため、うまく施工ができるか不安を抱きつつ工事を開始しましたが、発注者である大阪広域水道企業団東部水道事業所、協力工事会社、資機材供給業者の皆様のご協力のお陰で、無事故でかつ良い品質の構造物の供給ができ、工事を完了する事ができました。
関係者の皆様には、この場をお借りして感謝致します。