高水圧下における既設シールドトンネルからの発進
はじめに
本工事は、東京都豪雨対策基本方針(改定平成26年6月)により50㎜拡充対策地区に位置付けられている戸越、西品川地区周辺の浸水被害を軽減するため、新たに目黒川に雨水を排水する下水道管を整備するものです。
戸越銀座商店街の地下に既設シールドトンネル(内径3,600mm)からの直接発進を行う工事で、シールド発進立坑からおよそ1.1㎞が推進発進起点です。
工事概要
以下に、工事概要を示します。(図-1)

| 工事名 | : | 第二戸越幹線整備工事(下流部シールド) |
| 工事場所 | : | 東京都品川区西品川1丁目 |
| 発注者 | : | 品川区 |
| 施工者 | : | 大成・松本・鈴中建設共同企業体 |
| 工法 | : | アルティミット工法泥水式 |
| 呼び径 | : | 1200 |
| 管種 | : | 外殻鋼管付きコンクリート管(合成鋼管) L=0.6m |
| 推進延長 | : | L=59.703m |
| 曲線 | : | 平面曲線 R=20m×1箇所 R=100m×1箇所 |
| 土被り | : | 28.27m~24.08m |
| 土質 | : | 礫質土、泥岩 |
| 発進箇所 | : | 外径φ3,950mm、内径φ3,600mm 鋼製セグメント |
| 到達立坑 | : | φ3,000mm ケーシング |
| 施工期間 | : | 令和4年11月4日~令和5年5月27日 |
課題と対策
本工事における課題を事前に抽出・検討し実施した対策を以下に記述します。
- 高水圧における推進の課題1
- 推進発進位置には0.22MPaの高水圧の東京礫層があり、通常の発進坑口では出水リスクが高いと考えました。
- 高水圧における推進の対策1
- 発進坑口は、高水圧対応のL型パッキンを採用し、施工に先立ち、要求された水圧+0.2MPaの0.42MPaを作用させ、推進管の仮定偏心量(25㎜)を考慮した止水実験を行いました。
水圧を作用させ、2時間後のエントランス状態を確認し、漏水の有無やゴムパッキンの変形がないことを確認しました。(写真-1)

- 高水圧における推進の課題2
- 本工事は、高水圧のため通常の到達方法では掘進機回収時、掘進機解体時に出水リスクが懸念され、回収等では到達立坑内のスペースがないため他に代わる方法を検討しました。
- 高水圧における推進の対策2-1
- 掘進機到達前にあらかじめ鏡切を行い、流動化処理土にて埋め戻しました。
到達は流動化処理土内を掘削し所定位置まで掘進を行い、裏込め注入後流動化処理土掘削を行い掘進機の回収を行いました。
- 高水圧における推進の対策2-2
- 掘進機の回収は、立坑内に出ているカッター部、テール1のみ回収し、テール2、後方筒は残置し内部解体のみを行うことで、回収時に再度ジャッキで押すことなく、異常出水のリスクを低減させました。
- シールド坑内設備の課題1
- 推進発進起点には、吊設備がなく、推進管及び推進設備を設置するための吊設備が必要でした。
内径3,600㎜のシールド内で外径1,430㎜の推進管を吊るため、極力コンパクトで揚程を確保する必要がありました。
- シールド坑内設備の対策1
- 設置した吊設備は、セグメント継手にI型鋼吊り金具を取り付け、I形鋼100×180を設置し吊りレール構造としました。
荷役器具は、1tのトロリー付きチェーンブロックを使用しました。
上記の吊設備を推進管据付用と初期掘進後に使用する元押ジャッキ用の計2か所設置しました。(写真-2)

- シールド坑内設備の課題2
- 推進発進起点は、立坑から約1.2㎞離れているため推進設備を極力シールド坑内に収める必要がありました。
- シールド坑内設備の対策2
- シールド坑内の推進起点より先に鉄板にてステージを設置し、掘進機操作盤、元押ユニット、滑材プラント、受電設備、バイオトイレ等を設置し、バッテリーカーで推進管を運搬した際に支障がない箇所に設置しました。(図-2)

- 分割発進及び掘進機運搬方法の課題1
- 内径3,600㎜のシールド内で、発進坑口と支圧壁を設置すると架台延長として2,950㎜しかなく、掘進機の最小分割発進寸法が3150㎜のため初期掘進方法、掘進機分割について課題となりました。
- 分割発進及び掘進機運搬方法の対策1
- 掘進機は、新たに第一修正と第二修正の間に分割面を設け、2,950㎜以内で初期掘進できる寸法にしました。
初期掘進は、計画と実測を繰り返し行い施工しました。(図-3)
図-3 初期掘進図
- 分割発進及び掘進機運搬方法の対策2
- 初期掘進の第一段階としてカッター部とテール1を接続しシールド坑内に運搬しなければいけませんが、推進方向に運搬すると既存の安全通路手摺に干渉するため、掘進機をシールド坑内に運搬後、推進法線に回転させる手順で行いました。
方法として、掘進機運搬用台車に発進架台を設置し、中心に回転治具を設けました。(写真-3・写真-4)


- 互層における推進の課題
- 当現場は、発進起点の土質は泥岩と砂礫層の互層、到達立坑は砂礫層でした。
掘進機は砂礫対応のコーン破砕型のためチャンバー内閉塞が懸念されました。
- 互層における推進の対策1
- 掘進機隔壁に高圧ジェット(15MPa)を取り付け、泥岩層掘進時にはジェットを使用しながら掘進することで、チャンバー内の閉塞を起こさずに掘進できました。(写真-5)
- 互層における推進の対策2
- 通常は残土ピットで土砂の体積計測を行いますが、砂礫層と泥岩層の互層のため、土砂ピットの計測と調整槽の泥水増加量およびジェットの使用水量を計測し、日々の残土管理を行いました。

- 線形管理の課題
- 本工事には、2箇所の曲線区間があり、トータルステーションによる人力測量を行います。
しかし、内径1200㎜の空間での測量や、急曲線における測量回数の増大により、所定の日進量の確保が難しくなります。
- 線形管理の対策1
- 自動測量システムを採用し、通常30~45分程度かかる測量時間を10分に短縮することで、日進量の確保や、急曲線における測量頻度を増やすことで、精度保持に努めました。(写真-6)
- 線形管理の対策2
- ジャイロコンパスにより掘進機の方向をリアルタイムに管理することで、掘進機の位置を想定することが可能になりました。


おわりに
本工事では、一般的な推進工事と異なり、既設シールド内発進でしたが、計画を密に行い、日々の管理を徹底することで、順調に施工することができました。
しかしながら、改良すべき点はいくつかあり、今後の既設シールド発進および高水圧における推進現場に活かしていきたいです。
最後になりますが、ご協力いただいた関係者の皆様にはこの場をお借りして厚くお礼申し上げます。

