「23災第21407号(8)尾崎橋(上部工)橋梁災害復旧工事」 現場報告

はじめに

二級河川面瀬川を横断する尾崎橋は、面瀬川下流側約100mほどのところにあった幅員4.0mほどの橋でした。
東北地方太平洋沖地震の災害復旧事業での河川堤防の築造、および市道のルート変更とあわせて、尾崎橋も移設されることとなり、新たに上部工架橋を行ったものです。

工事概要

工事名23災第21407号(8)尾崎橋(上部工)橋梁災害復旧工事
施工場所宮城県気仙沼市松崎片浜外1地内
発注者気仙沼市 建設部 土木課 災害復旧係
受注者機動建設工業株式会社 仙台営業所
工期令和2年3月7日 ~ 令和3年5月31日
工事内容コンクリート橋上部・PC箱桁橋工
・橋梁付属物工
・仮設工
・踏掛版工
橋梁下部・橋台工
道路改良・道路土工
橋名尾崎橋
上部工形式単純PC箱桁橋
橋長57.600m
桁長57.400m
桁高2.191m ~ 2.690m
支間長56.300m
有効幅員6.500m
全幅員7.700m

施工位置図

施工フローチャート

着工  
  
基準測量
  
進入路整備
  
架設支保工
  
支承工
   底版・側面型枠組立・鉄筋組立
PCケーブル組立
コンクリート打設
PC箱桁製作工
(下床版・ウェブ)
 
 
    
PC箱桁製作工
(上床版)
 内部支保工組立
鉄筋組立・型枠組立
コンクリート打設
PCケーブル緊張
PCグラウト
 
   
  
橋梁付属物工
(地覆)
 鉄筋組立・型枠組立
コンクリート打設
 
    
橋台工 足場組立
鉄筋組立・型枠組立
コンクリート打設
 
   
  
橋梁付属物工 ガードレール取付
コンクリート塗装
検査孔蓋
伸縮装置
排水装置
 
   
架設支保工解体 
 
    
踏掛版工 踏掛版
摺付版
 
   
片付け 

着工前・完成写真

写真-1 着工前
写真-2 完成

進入路整備

工事に先立ち、工事車両、重機等の進入路を整備しました。
架設支保工構築に用いる150tクローラクレーンを搬入するため、進入路、作業ヤード、右岸、左岸共に地盤改良及び敷鉄板を敷設し地盤を補強しました。

架設支保工

河川を跨ぐため、河川上はトラスを用いた特殊支保工、防潮堤ブロック上はくさび結合支保工を採用しました。
支持杭は、引抜き時の施工性を考慮して、完成後の箱桁の直下を避けて橋体幅員より外側となる位置に打設し、150tクローラークレーンを使用して橋長20.5mのHSトラスを架設しました。
また、支持杭の打設精度が必要であるため、井桁形状の打設架台を組立てて打設し、支持杭の水平および鉛直精度を確保しました。

図-1 支保工図(側面図)
図-1-1 A部詳細
図-2 支保工図(断面図)

支承工

工場検査を実施し、支承の性能確認を行いました。(写真-11参照)
支承据付位置の箱抜き部をチッピング処理、補強鉄筋組立を行い、支承設置高さを調整するアンカーボルトを設置して、支承設置高さを管理して支承を据えました。
支承の水平度と支承間隔が規格値に収まるよう入念に管理して、沓座に無収縮モルタルを打設しました。(図-3参照)

図-3 支承据付要領図

PC箱桁製作工(下床版・ウェブ)

PC箱桁製作工は、下床版・ウェブと上床版の2回に分割して施工しました。
下床版・ウェブを、型枠、鉄筋、シース(PCケーブル挿入)、コンクリ―ト打設の順で施工しました。
PCケーブル挿入は、ウインチとターンテーブルを使用することで効率よく行うことができました。
下床版・ウェブ施工時に挿入したPCケーブルは緊張作業を行うまで約40日間外気にさらされ、海岸付近の飛来塩分が多い施工環境であることを考慮すると発錆することが考えられるため、防錆処理を行うことを提案しました。
PCケーブルは「内ケーブル用PC鋼より線 一次防錆剤仕様書」に準じて防錆処理された材料を使用しました。
また、コンクリート打設は、右岸、左岸の両側にスーパーロングブームのコンクリートポンプ車を配置して支間中央部を先に打設し、配管しないでブームの振り回しのみで両端部へ向けてコンクリート打設を行いました。

図-4 施工箇所図(下床版)

PC箱桁製作工(上床版)

下床版のコンクリート打設後、上床版の型枠、鉄筋、コンクリート打設の施工を行い、コンクリートの強度確認後、PCケーブル緊張、グラウト注入を行いました。
定着工法はフレシネー工法を用いて、両引き緊張にてプレストレスを導入しました。
緊張管理はμ管理(摩擦係数をパラメーターとする管理手法)で実施し、すべてのケーブルで異常なく、所定のプレストレスを与える事が出来ました。
緊張作業完了後、シース内にグラウト注入を行いました。グラウトはノンブリーディング高粘性型を注入しました。
また、PCケーブルの配置高さの最も低い支間中央部から注入し、両桁端部で排出させることで、シース内の残留空気の発生を抑制し、グラウト充填の確実性を向上させました。
本橋梁は、支持杭で横断方向に支持された渡桁、渡桁で支持されたトラスと、橋梁の変位が生じやすい支保工形式であったため、予め計画し想定したたわみと実際のたわみに差異が生じることが懸念されましたが、橋面高さは規格値内に収まる結果となり、良好な管理ができたと考えます。

図-5 施工箇所図(上床版)
図-6 PC鋼材配置図
図-6 PC鋼材配置図
図-6 PC鋼材配置図

橋梁付属物工

橋体施工後は、地覆工、伸縮装置工、排水装置工、橋梁用防護柵工(ガードレール)、検査路工、銘板工を施工しました。
ガードレールは施工性を考慮して、支柱と地覆の接続部をあと施工タイプの材料への変更を提案しました。
また、ガードレールと地覆との隙間が広いため、転落防止用のビームパイプ追加の提案をしました。(写真-25参照)
伸縮装置については、伸縮装置と除雪車の除雪板との衝突、引掛け防止のため耐グレーダー仕様、地覆部からの漏水を抑制するための遮水エッジを提案しました。(写真-27参照)
下部工のコンクリート塗装については、「宮城県 設計施工マニュアル」に準じて塗装範囲を決定し、施工を行いました。

橋台工

橋台部のパラペットとウイング部の施工を行いました。

架設支保工解体

側面足場及び、くさび結合支保工解体後、HSトラスを受桁上でジャッキアップし、横取装置を使用してクレーンで吊上げ可能な位置まで横取移動させ、150tクローラークレーンで撤去を行いました。(写真-35、写真-36、写真-37参照)
支持杭は引抜時に橋体に干渉しない様に橋体の外側に打設したため、バイブロハンマを使用して容易に引抜くことができました。(写真-38参照)

踏掛版工

橋台背面埋戻し後、踏掛版と摺付版の施工を行いました。
踏掛版や摺付版は橋梁部と道路部の境目での段差発生の防止を目的としています。
踏掛版と摺付版の間にひび割れ誘発目地を設け、防錆処理を施したタイバーを設置しました。(写真-39参照)

図-7 踏掛版・摺付版 断面図

完成

終わりに

発注者である気仙沼市役所の皆様および協力工事業者、資機材供給業者の協力のもと、工期内に無事故・無災害で工事を完成することができました。
関係者の皆様にはこの場をお借りしまして感謝申し上げます。