中央配水場更新工事(配水池築造工事)施工報告

はじめに

大阪広域水道企業団泉南水道センターの中央配水場は、昭和46年より供用開始して以来、約50年が経過しています。
中央配水場更新工事は、配水池や管理棟兼事務所の施設の老朽化に伴い、耐震化や施設機能の向上等を目的に構造物を撤去して新たな施設へ建替を行うものです。
本稿は、中央配水場更新工事の内、当社が施工を行った配水池築造工事の施工に関する工事報告です。
配水池の構造は、プレストレストコンクリート製長円形タンク(隔壁2槽式)の場所打ちPCタンク(固定支承)です。
当タンクは既設構造物のあった位置に建設する為、長円形の平面形状が採用されています。

図-1 中央配水場更新工事完成予想図

図-2 中央配水場位置図

工事概要

工事名中央配水場更新工事(内当社工事:配水池築造工事)
発注者大阪広域水道企業団 泉南水道センター
元請業者久本組・岸本建設共同企業体
所在地大阪府泉南市樽井737
工期2021年 2月24日  ~2027年 2月26日
当社実施期間2023年10月23日  ~2024年11月8日(配水池築造工事)
工事概要PC配水池築造工基礎形式COPITA型プレボーリング杭工法(※基礎杭は元請施工)
上杭PHC JIS強化杭 C種 φ1,000×8.0m
下杭PHC A種 φ1,000×6.0m
配水池構造形式プレストレスト製長円形タンク(隔壁2槽式)
支承形式固定構造
配水池有効容量V=5,900m3(2,950m3×2槽)
配水池有効水深H=8.5m
配水池内径水槽幅W=52.8m 水槽奥行D=14.5m
配水池付帯設備工内部梯子(FRP製)、屋上手摺(SUS製)、人孔・点検孔蓋(SUS製)、ガラリ(SUS製)
雨樋(配管・飾りマスSUS製)、避雷針設備
配水池塗装工内面塗装工(3,325㎡)、屋根防水工(836㎡)、外壁塗装工(1,881㎡)
(底版部)             (屋根部)
図-3 配水池平面図
図-4 配水池断面図

配水池築造工施工フローチャート

基礎杭工

PHC杭(COPITA型プレボーリング杭工法)の施工と底版均しコンクリートの打設(共に元請工事)完了後に、杭頭鉄筋の組立を行いました。
杭頭鉄筋は均しコンクリート上で地組をし、クレーンにて所定位置に吊り込んで設置を行いました。
杭の中込コンクリートは、先に打設すると杭頭鉄筋が固定されてしまう為、底版下筋組立の施工のしやすさを考慮して下筋組立の後に杭頭鉄筋を所定の位置に配置してから打設を行いました。

底版工

ピットコンクリート打設完了後、底版鉄筋の組立を行いました。
今回の工事は作業ヤードが狭く底版鉄筋を組み立ててしまうと、クレーンが配水池の東・西側にしか据付ができなくなる為、一部底版鉄筋を組立せずクレーン据付場所を確保しながら組立を行う等の作業ヤードの工夫をしながら施工しました。

写真-3 底版鉄筋組立状況

底版鉄筋組立と並行して、PC鋼棒の建込・型枠の組立を行いました。
通常PC鋼棒の固定用足場(枠組足場)は、そのまま側壁の施工に使用する外周足場となりますが、今回作業ヤードが狭く、底版打設後に、底版天端高さまで埋戻しを行うため、PC鋼棒固定用足場の組払しを行いました。
また、資材搬入車両・ミキサー車等の搬入ルートを確保する為、単管足場を併用して、足場設置幅を減少しました。

底版コンクリートは、予定数量がV=1,204m3(H=1,300mm)であり、生コン車約300台以上となります。
先述の通り作業ヤードが狭く、ポンプ車据付可能台数は2台までの為、打設を3回に分けて行いました。
コンクリートの打継ぎは水平方向にし、打継ぎ面にはレイタンス処理の必要が無い打継ぎ処理剤ジョイントエースJA-40を使用しました。
底版コンクリート打設前にコンクリートポンプ車と生コン車の配置・待機場所の確保・タイムスケジュールおよびコンクリートの打設順序の検討を入念に実施しました。
打設班は2班とし、1班9~10人体制で行いました。
事前の検討および作業手順周知会の実施等を行った結果、3回の打設とも大きなトラブルなく完了しました。

図-5 底版打設リフト図
写真-6 底版コンクリート打設状況
写真-7 底版コンクリート打設完了

側壁・隔壁・柱工

側壁・隔壁・柱は高さが9.0mとなり、施工を5リフト(1リフト1.8m×5リフト)に分けて施工を行いました。
各リフトごとに鉄筋組立、シース組立(側壁・隔壁)、横締めPC鋼より線挿入(側壁・隔壁)、型枠組立、コンクリート打設の順序で施工しました。
PC鋼より線はターンテーブルを使用し、先行配置したシース内に人力で挿入しました。

写真-8 側壁鉄筋組立状況
写真-9 側壁型枠組立状況
写真-10 PC鋼より線挿入(ターンテーブル使用)
写真-11 PC鋼より線挿入状況

柱の鉛直方向鉄筋継手部はガス圧接を行いました。
施工後は圧接部の超音波探傷検査、外観検査を行い品質の確認を行いました。

隔壁部の横締めPC鋼より線はPC鋼材の長さが短い為、片引き緊張の設計となっていました。
緊張端(固定側)は固定定着具を設置しました。

側壁のコンクリート打設はポンプ車2台を使用し2班で施工しました。
打設後の打継ぎ部レイタンス処理は、隣接する工場への処理水、斫りガラの飛散を防止する為、ブルーシートで養生して施工しました。

外周足場・内部支保工組立

外周足場・内部支保工は側壁・隔壁・柱各リフトの作業床を確保する為、施工リフトと並行して組立を行いました。
鉄筋・型枠・PCの施工業者と打ち合わせを密に行い施工順序を決定しました。

縦締緊張工

縦締めPC鋼棒の緊張は、側壁部4・5リフト目(合計496本)、隔壁部2・5リフト目(72本)に行いました。
これは、配水池に作用する水圧が、側壁下端側により多くかかる為、下端側に多く緊張力を与えるためです。
緊張作業はジャッキ・ポンプを各2台使用し、2班で施工しました。
緊張順序は2班が対角にスタートし、1班が時計回り、もう1班が反時計回りに進めていきました。

横締緊張工

全てのPC鋼棒緊張完了後、側壁(1S21.8)・隔壁(1S28.6)の横締めPC鋼より線の緊張作業を行いました。
側壁部はポンプ3台と緊張ジャッキ6台を使用し、配水池1周を構成する3ケーブルを同時に両引き緊張しました。
隔壁部はポンプ・ジャッキ各1台で片引き緊張を行いました。
側壁31段93本、隔壁34段34本の緊張作業を行いました。

グラウト工

横締緊張完了後に、シース内の空隙へノンブリーディング低粘性型のグラウトを注入して、コンクリートとPC鋼材の一体化とPC鋼材の防錆性能を確保しました。
グラウト注入量は空袋数量及び流量計による注入量測定により確認しました。

屋根工

屋根スラブは支保工・型枠・鉄筋の順に組立を行い、コンクリートを打設しました。
コンクリート養生後、溶接金網を設置し勾配コンクリートを打設しました。

塗装工

塗装工として、内面塗装、外壁塗装、屋根防水の施工を行いました。
内面塗装は無溶剤型エポキシ樹脂(JWWA K 143日本水道協会規格)を使用しました。
まず、屋根天井と側壁・隔壁・柱を施工し、内部支保工解体搬出後に底版勾配コンクリートを打設し、底版の塗装を行いました。

外壁は下地調整材を塗布後に複層塗材REを塗装しました。
屋根防水は超速硬化ウレタン密着工法で施工しました。
吹付時は材料の飛散が考えられるため、シート等で養生を行いながら施工しました。

付帯設備工

付帯設備工として、内部梯子、人孔・点検孔蓋、ガラリ、屋上手摺、雨樋、避雷針の設置を行いました。
付帯設備の設置は足場の形状により設置が可能な時期が限られてくるため、各施工業者と打ち合わせを密に行い設置時期を決定し、施工を行いました。

おわりに

本工事は中央配水場更新工事の内の配水池築造工事でした。
工事を進めていく上で最も困難な課題は作業ヤードの狭さでした。
その問題を解決する為、作業足場や資材搬入ルートの工夫をし、元請業者様、発注者様、協力会社様との打合せや工程調整、施工計画の検討を実施して、無事故無災害で完了する事が出来ました。
本工事においてご指導頂いた元業者様、発注者様および各協力業者様に感謝いたします。