藤井寺ポンプ場浄水池ほか耐震補強工事(1号池)工事報告
はじめに
藤井寺ポンプ場は淀川周辺の浄水場で処理した上水道水を大和川以南へ送水する中継ポンプ場であり、二つの系列(1号池、2号池)を有します。
浄水池は昭和48年に、吸水井は昭和49年に構築されました。
耐震性能を確保するため先行して2号池(浄水池及び吸水井)の耐震補強を施工しましたが(令和4年1月竣工)、今回新たに1号池(浄水池及び吸水井)の耐震補強を行いました。
工事概要
工事名 | 藤井寺ポンプ場浄水池ほか耐震補強工事(1号池) | ||
施工場所 | 大阪府藤井寺市川北一丁目 | ||
発注者 | 大阪広域水道企業団 東部水道事業所 | ||
受注者 | 機動建設工業株式会社 関西支店 | ||
工期 | 令和5年2月10日 ~ 令和7年3月21日 | ||
工事内容(主たるもの) | |||
耐震補強工(1号浄水池) | コンクリート増打工 あと施工せん断補強筋工 伸縮可とう継手工 コンクリート防食工 補修工 | 277m3 5,228本 177m 12,022m2 1式 | |
耐震補強工(1号吸水井) | 伸縮可とう継手工 コンクリート防食工 補修工 | 52m 1,769m2 1式 |
施工位置図
藤井寺ポンプ場は、大和川と外環状線(国道170号)の交差箇所の北東に位置し、普段は藤井寺市立市民川北スポーツ広場の名称で主に野球用グランドとして市民のスポーツ活動に有効利用されています。
このグランド地下に浄水池があり、南側に吸水井が併設されています。
本工事では2号池を供用した状態で1号池を運転停止して、耐震補強工事を行いました。
当工事の完成により、藤井寺ポンプ場は耐震性能を確保できたことになります。

施工フローチャート





施工内容
(1)準備工・開口撤去工
施工に先立ち1号浄水池・1号吸水井(以降:池)内部を先行工事にて空水にしました。
その後、既設床版をワイヤーソーにより切断して施工用開口部を設置しました。
開口部には施工時の雨水の浸入防止と、開口部近接位置まで施工機器が近づけるようにするため、仮設のコンクリート製止水壁を設置しました。


施工前の池内は、コンクリート表面に防食塗装等は施工されておらず、前回施工した2号池と同様に経年劣化によるひび割れ(漏水あり、漏水無しの両方確認)、断面欠損、露出鉄筋の錆等が確認されました。
特に天井部のひび割れ(漏水無し)、柱頭部のひび割れ(漏水無し)が多量に確認されました。






(2)ハンチ撤去
耐震補強を行うにあたり、コンクリート増打工及びあと施工せん断補強筋工の施工箇所に干渉する既設ハンチは、手ハツリにより撤去しました。
また、浄水池内での撤去数量は63m3と多量でありましたが、壁上端のハンチ撤去については、あと施工せん断補強筋の施工は削孔深さを大きく(ハンチ部を撤去せず削孔深さを拡大)して対応できるよう施工方法を検討し、ハンチ撤去を省略するように設計変更を行って、ハンチ撤去数量を53m3まで縮小させてほぼ人力施工となるはつりガラの収集・搬出・集積作業の省力化を行いました。


(3)目荒し工(ウォータージェット工:WJ工)
既設コンクリート面とコンクリート防食塗装との付着性を確保するために、コンクリート表面に超高圧洗浄(WJ)により目荒しを行いました。
処理厚さはコンクリート表面の脆弱部と中性化深さ部分の除去を基本として、試験施工状況を発注者監督員の確認を得て、処理程度(200MPa)を決定しました。


(4)あと施工せん断補強筋工
あと施工せん断補強筋工の工法は、RMA工法(先端斜めカットせん断補強鉄筋)を用いて施工を行いました。
既存構造物の表面に、鉄筋探査を行って既設鉄筋位置を確認したうえで打設位置を決定して、ハンマードリルを用いて削孔し、その孔内に水に2~5分程度浸水させたモルタルカプセル(RMAカプセル)を挿入しました。
RMAカプセルを用いることにより、注入するモルタルの現場練り混ぜ作業を簡略化し、作業の軽減が図れたとともに、モルタルの品質安定を確保できました。
その後にせん断補強鉄筋の打ち込みを行いました。
モルタルが硬化した後は、せん断補強鉄筋と既存構造物が一体化し、既存構造物のせん断補強鉄筋を補う事ができます。
また、「RMA」の先端斜めカットせん断補強鉄筋は、一般の鉄筋(異形棒鋼)に下図に示す様に鉄筋先端の斜めカットのみの加工を加えることにより使用でき、特別な部品等を必要としない為、現場への材料供給期間を短縮することが出来ました。

あと施工せん断補強筋工は耐震補強でせん断補強を必要とする箇所にD13の補強筋を用いて施工し、1号浄水池の床版114本、底版1,883本、壁上端1,854本、壁下端1,377本、計5,228本を施工しました。





(5)コンクリート増打工
あと施工せん断補強筋施工完了後、耐震補強で曲げ補強を必要とする箇所に部材厚200mmの増打コンクリートを施工しました。
また、施工順序は、アンカー筋の定着、足場組立、型枠組立、コンクリート打設となります。
池内の施工箇所は底版、壁、柱の部材で、先に底版、壁を施工してから、施工箇所が多い柱については足場組立を同時進行させながら、打設リフト、ポンプ圧送距離、1日打設可能数量等を考慮して打設順序を検討して打設回数12回で施工しました。
コンクリートポンプの配管延長が長くなり、コンクリートが閉塞するリスクが増えることと、コンクリートポンプ車の筒先を打設箇所に順次移動させることに時間を要することから、1回あたりの打設量が極めて制限されたことに苦労しました。
なお、柱上端部は200mm高さをコンクリート投入口として残し、最後に無収縮モルタルを注入打設して仕上げました。










(6)伸縮可とう継手工
1号浄水池は中央部50m区間を仕切る形で伸縮目地があります。
1号吸水井は2号吸水井と接合しているため伸縮目地が1箇所配置されています。
既設コンクリート内部には外部より地下水が浸入しないように止水板が埋設されていますが、経年劣化により漏水や目地材の破損が発生しているため、新たに伸縮可とう継手を設けました。
耐内圧・耐外圧0.1MPaであり、かつ建設技術審査証明認証取得品から製品を選定しました。
製品製作時には工場検査を実施して製品の性能を確認したうえで現地搬入して設置しました。
設置部分のコンクリート防食塗装は先行施工して伸縮可とう継手をその上に重ねて止水性を確保しています。
施工順序は足場上で先に天井・壁を設置し、足場撤去後に底版を設置しました。
ゴムは現地で熱加工して圧着して一体化しました。






(7)補修工
調査工にて判明したコンクリートの損傷に対して補修工を実施しました。
実施した補修は止水工、Uカットシール充填工法、エポキシ樹脂注入工法、断面修復充填工、露出鉄筋部補修工、吸込管補修工(1号吸水井のみ施工)です。
使用材料は水道水に対して影響の少ない材料から選定しました。






(8)コンクリート防食工
目荒らしした既設コンクリート表面に著しい凹凸・段差があったため、厚生労働省令第5号水質基準適合品であるポリマーセメントモルタルを使用して下地調整(不陸修正)を行いました。
その上に塗布するコンクリート防食はJWWA K 143の規格を満足する無機溶剤型エポキシ樹脂による水道用コンクリート水槽内面防食被覆工法を採用しました。
施工にあたっては、下地調整厚さ、水分量、防食塗装塗布厚さ、付着強さ試験の管理を行うとともに、塗布に使用する刷毛、ローラー等を洗浄する溶剤の混入による水質への影響を抑えるため、池外での洗浄、こそぎ落としを徹底して施工しました。
また、池内の結露が著しく発生していたため、ジェットファーネス(温風機)を用いて池内に温風を供給することで良好な施工環境を維持しました。






(9)開口復旧工
池内の防食塗装が完了したあとに施工用開口部の復旧を行いました。
既設床版復旧においてはフレア溶接を行って鉄筋の復旧を行いました。


(10)洗浄・消毒・排水工
防食塗装完了後に養生期間を3か月確保して乾燥させた後、池内の洗浄、消毒を行いました。
消毒はH.W.L.までの注水に合わせて次亜塩素酸ナトリウムを注入し、残留塩素濃度が水張直後で10ppm以上、24時間後で5ppm以上あることを確認しました。
その後、排水・注水により水を入替え、水質試験(51項目)の合格を確認した後、供用開始となりました。

注入プラント設置状況

おわりに
本工事では、施工範囲が非常に広範囲であることと、経年劣化による補修実施程度が池内に入ってみないと不明であったため、うまく施工ができるか不安を抱きつつ工事を開始しましたが、前回施工した2号浄水池・2号吸水井の施工経験を活かすことができ、更に発注者である大阪広域水道企業団東部水道事業所、協力工事会社、資機材供給業者の皆様のご協力のお陰で、無事故でかつ良い品質の構造物の供給ができ、工事を完了する事ができました。
関係者の皆様には、この場をお借りして感謝致します。



