「後田推進工事」(岩盤推進工事)と「掘進機に於けるコーン内閉塞防止装置について」

「後田推進工事」(岩盤推進工事)

工事概要

本工事は、流域下水道工事で、呼び径900のヒューム管を泥水式推進工法により埋設するとともに、人孔を構築するものです。
主な工事概要は、下記のとおりです。

工事名後田工事
工事場所福島県内
工事内容泥水式推進工呼び径900
推進延長L=152.9m(2スパン)
(L1=37.3m 、L2=115.2m)
立坑構築工片発進立坑2箇所
両到達立坑1箇所
人孔工2箇所

施工経緯

当初計画では、推進管路部の土質条件はまさ土と推定されていましたが、最初の短いスパンL1=37.7mの推進施工において泥岩と思われる地盤に遭遇し、掘進機の面板閉塞をおこしました。
推進延長が短かったために問題とはなりませんでしたが、2スパン目以降の推進区間の土質状況を再調査することとなり、全延長に電気探査工法を採用し、詳細調査として4カ所のボーリング調査を実施しました。
この結果、転石や岩盤が確認され、掘進機を検討して転石や岩盤に対応できるトリコンビット面板を採用しました。
もう一つの問題となったのが泥岩による面板およびコーン内の閉塞でした。
この対策として本工事では掘進機チャンバー内に高圧噴射装置を取り付け、対応をすることとしました。

施工結果

トリコンビットの装備により転石や岩盤にも対処でき、また、泥岩によるチャンバー内閉塞や面板閉塞もなく無事推進施工を完了することができました。

「掘進機に於けるコーン内閉塞防止装置について」

はじめに

岩盤推進工事をコーンクラッシャー内蔵の掘進機によって掘削する場合、風化岩部(粘性地盤)を掘削する際にコーン内の閉塞により、面板閉塞を起こしカッタートルクが上昇し掘削スピードが著しく低下した経験があることと思います。
このコーン内の閉塞土砂を除去する目的で、コーン内に高圧水を噴射する装置を後田工事に採用しましたので、ご紹介いたします。

使用掘進機

使用掘進機は呼び径900のDH機で、掘進機出荷前の分解整備時に、ラサ工業(株)で高圧噴射装置を取付けました。
高圧噴射ノズルは、日本国内に於いて容易に入手できるCCP協会のジェットノズルより、直径3.0mmを選定しました。

高圧ジェットによる洗浄効果

高圧ジェット水によるコーン内洗浄効果は、

  1. ジェット水の噴射角度
  2. ジェット水の噴射位置
  3. ジェット水の圧力
  4. ジェット水の水量

により多少の差があるものと考えられます。
後田工事は、高圧噴射装置の取り付け一号機であり、また岩盤掘削用の特殊面板を採用している事を考慮して、取付仕様を次の様にしました。

噴射角度

ジェット水の噴射角度は、特殊面板の背面洗浄も兼ねて下図の位置としました。

取付位置

アウターコーン先頭部の取付可能な範囲で最先端としました。
予備として1ヶ所、合計2ヶ所に同一の装置を設置しました。

洗浄水のジェットノズルを直径3.0mmとしたことから、概略の水圧と水量は下表のようになります。

水量 L/min水圧 MPa
8020
4010
205
102.5

取付状況

ノズルの取付状況および試験運転時の噴射状況を写真に示します。
噴射状況は、JSG(ジェットグラウト)用高圧ポンプを用い、20MPa(水量約80L/min)に設定した場合のものです。

後田工事の使用報告

掘進機を発進架台に据え付けた状態で、噴射圧力2MPa~10MPaに変化させ噴射テストを行い、噴射位置、噴射角度を確認しました。
掘進時の使用状況としては、高圧噴射の開始時は切羽の環流バランスが崩れやすく、カッタートルクの上昇、先端抵抗力の上昇、掘進速度の低下等の弊害がありました。
しかし、長時間の高圧噴射(1MPa~10MPa)を行うと環流が安定し先端抵抗力が減少しチャンバー内の閉塞が解消していることが確認できました。
当工事は、高強度の花崗岩、風化花崗岩、密なマサ土、転石、砂礫、粘性土と多種多様な土質でしたが、約2.7mの日進量で推進することが出来ました。

まとめ

今回の後田工事では、現場の諸条件、掘進機の諸条件により全推進区間を均等に高圧噴射することが出来ませんでしたが、コーンクラッシャー内の閉塞はほぼ解消できたと考えております。
今後高圧噴射装置の取り付け位置、噴射角度、ジェットノズルの径等を再度検討し、当社所有の掘進機に順次取り付け、また、高圧噴射ポンプについても簡単な機材を提供できるよう考えております。
なお、コーンクラッシャーの高圧噴射技術は、当社とラサ工業の共同出願特許として登録されています。