岩盤・粘土・巨石・砂礫層が混在する地盤での施工報告
1.はじめに
本稿では、浸水対策事業の一環として泥水式推進工法による雨水貯留管敷設の施工について、報告させていただきます。
2.工事概要

| 工事名 | 八頭町竹ノ下雨水幹線建設工事 | |
| 工事場所 | 鳥取県八頭郡八頭町郡家地区内 | |
| 事業主 | 八頭町 | |
| 発注者 | 日本下水道事業団 | |
| 施工者 | 機動・竹内特定建設共同企業体 | |
| 契約工期 | 2020年12月12日~2022年3月18日 | |
| 工事内容 | 立坑築造工 | |
| 鋼矢板Ⅳ型立坑 | 2箇所 | |
| ライナープレート式立坑 | 1箇所 | |
| 地盤改良工 | 1式 | |
| 吐口構造物築造工 | 1箇所 | |
| 泥水式推進工 | 1SP | |
| 工法 | 泥水式推進工法(アルティミット工法) | |
| 呼び径 | 1500 | |
| 管種 | 推進工法用鉄筋コンクリート管 | |
| 50N2種 L=2.43m | ||
| 内水圧 | 0.4MPa | |
| 外水圧 | 0.1MPa、0.2MPa | |
| 推進延長 | 276.06m | |
| 曲線 | 平面 R=100m CL=44.788m | |
| 平面 R=100m CL= 5.443m | ||
| 土被り | 5.35(最大)~ 2.67m(最小)(図-1) | |
| 土質 | 火山砕屑岩、粘土質砂礫、巨石混り砂礫 | (互層地盤) |
| 最大礫径 | 450mm | |
| N値 | 6~50 | |
| 最大礫率 | 58%(事前調査結果) | |
| 砕屑岩一軸圧縮強度 | 10.1MN/㎡ | |
| 玉石 一軸圧縮強度 | 258.8MN/㎡(追加調査結果) | |
| 発進立坑 | 鋼矢板立坑 Ⅳ型 | L:8.0m B:6.0m H:7.8m |
| 到達立坑 | ライナープレート式立坑 | φ3,500mm H:6.8m |
| 施工期間 | 2021年6月1日~2022年3月5日 | (推進工休止期間含む) |
3.本工
推進工事の計画において重要なポイントとして、推進管路部の土質の把握、推進工法の選定、対象土質や推進線形に対応可能な掘進機の選定、周辺地域での推進工事実績の確認等があげられます。
本工事においても、同様に課題の抽出と対応策について検討を行いました。
その内容を記述します。
3.1岩盤、巨石の一軸圧縮強度の確認
施工計画段階から火山砕屑岩への鋼矢板圧入(硬質地盤クリア工法にて)や、推進工施工に対して計画日進量を確保するための対策を検討するため、一軸圧縮強度の確認が必須であると判断し、追加調査を実施しました。
岩盤層ではボーリング調査にてコア採取を実施し、巨石については、立坑掘削時に採取した巨石から供試体を作成し、一軸圧縮強度試験を行いました(写真-1)。
試験の結果、推進管路部の岩盤強度は10.1MN/㎡のため軟岩であると判明しました(表-1)。
また、巨石では258MN/㎡と硬質であることが確認されました(表-2)。



3.2推進工法および掘進機の選定
設計土質資料より、最大礫径は450㎜(コア長径の3倍想定による算定結果)、透水係数1.33×10-4m/s、最大礫率58%を確認しました。
土質条件に対応可能な掘進機および推進工法を選定するため、下記の課題に対して検討を行いました。
検討課題1)互層地盤への対応
推進施工で対象となる土質は、軟岩、粘土、巨石混り砂礫層と多様であり土質の変化に柔軟に対応が可能な工法、機種を選定するため、特に対応が困難である巨石破砕に視点を置き検討を行いました。
検討課題2)巨石破砕について
玉石の一軸圧縮強度の試験結果で確認したとおり硬質な巨石であるため、巨石破砕の過程で面板や、切削ビットが損傷するあるいは、破損といった重大トラブルを懸念しました。
これらについて検討の結果、掘進機は、面板損傷のリスクを低減させるため、面板による破砕に加えチャンバ内部でも破砕が可能な機種を選定しました。
また、掘進時の切羽管理や、巨石破砕後の排土方法、推進管路部周囲へ与える影響を考慮し、泥水式推進工法を採用しました(写真-2、図-2)。


3.3掘進機適用範囲を超える巨石を確認
発進立坑の築造が完了し、推進仮設備工と到達立坑築造を同時に着手し順調に施工していましたが、到達立坑掘削時に推進管路部にて800㎜を超える巨石を確認しました(写真-3)。
到達立坑の想定土質は、巨石混り砂礫層から岩盤層へ変化する土質となっていました。
しかしながら、砂岩層が想定よりも高い位置まで上がっているのだと思い込み苦労しながら掘削したところ、想定より大きい巨石の存在を確認しました。
発注者へ第一報の連絡を行い、確認された巨石の大きさおよび、回収した深さ等の情報整理と、計画掘進機での施工可否の確認を含めた資料整理を行うと同時に、推進仮設備工の施工を一時中断する判断としました。
推進工の工程では、掘進機の搬入および据付が完了し、近日中に鏡切りを行い、発進を予定していましたが、計画で定めるアルティミット工法の巨石に対する適用範囲は、C1土質区分では(掘進機外径の50%未満かつ600㎜以下礫率80%未満)と定められているため、確認された巨石は適用範囲外とし、再度適用土質の見直しを行いました。

3.4掘進機の再検討および追加調査の実施
巨石の出現に伴い推進管路に点在する巨石を含む土質区間の範囲を把握するため、追加ボーリング調査を3箇所で実施しました。
その結果、発進立坑より40m地点でコア長径180㎜、130m地点で長径150㎜、210m地点でコア長径300㎜を確認しました。
3倍換算をした場合、450~900㎜の巨石が点在することが想定されます。
そこで、設計土質区分と合わせ当初条件の最大礫径600㎜を超える土質区間を、到達立坑より約100mの区間とし掘進機の再選定を実施しました(図-3)。

掘進機の再選定では、実際に確認された巨石800㎜に対応するため、アルティミット工法C2土質区分の基準(掘進機外径の80%未満かつ2000㎜以下、礫率80%未満)を基に検討しました。
また、巨石破砕時に生じるビットの摩耗、損傷に対応するため、機内ビット交換が可能な機体を選定することになりました(以下、再選定した掘進機を2号機と称す)。
2号機掘進機面板の形状およびビット配置では、巨石破砕時、掘進機面板の大部分で切削することが想定されるため、板型面板からセミドーム型特殊面板へ変更し、ローラビットによる切削軌跡を全断面で確保する計画としました(図-4)。

4.施工報告
本工事は、土質条件の変更協議および、掘進機の変更整備のため約4箇月間の施工中断期間を経て施工を再開しました(写真-4)。
掘進機の入れ替え作業や、推進設備の一部撤去再設置等追加の作業が発生しましたが、初期掘進から到達まで掘進不能といった重大なトラブルが発生すること無く施工を終えることができました。
その中で特に印象に残っている事項について、以下にその内容を記述します。


4.1ローリング現象
推進管路の土質は発進立坑から火山砕屑岩層、粘土質砂礫層、巨石混り砂礫層へと変化する地層となっていました。
ローリング現象の発生は、掘進中に回転運動する掘進機面板が硬質なものを切削または、切削時にビットが噛み込んだ際に回転していた面板が負荷により回転できない状態となった時に発生します。
そのため、巨石が想定される推進路線の後半では特にカッタトルクの変化に注視することを管理項目としていました。
また、ローリング対策として、掘進機と推進管をプレートにて内側から緊結固定する方法を採用しました。
実施工でカッタトルクが著しく上昇した区間は、砕屑岩層と粘土混り砂礫層の層境で、モータ電流値が定格の60%を頻繁に超える状態にあったため、掘進速度を抑えるようにしました。
しかしながら、一次処理機より粘土が排出されていたことや、掘削時の取り込み土量も極端に減少していたため、粘土が面板に付着し推進力に影響すると判断し、立坑管口にて送水ラインと排泥ラインを入れ替え面板洗浄、閉塞解除作業を繰り返しながら慎重に掘進を行っている中で、突然ローリングが発生しました。
掘進機のローリング状況を確認すると、掘進機の緊結固定に使用していたボルトが破断し、固定能力が著しく低下している状況を確認しました。
対応策として、内バンドを作成し、掘進機と推進管の接続部に被せるように設置し、あと施工アンカボルトにて固定を実施しました。
その結果、巨石破砕時に掘進機が振動している状態にあってもローリングが発生することはありませんでした(写真-5、図-6)。


4.2推進施工時の管理について
上述のとおり、推進管路部は互層地盤であるとともに、土被りも最大 5.35mから最小 2.67mと変化するため、掘削対象土質に応じた泥水管理、自然水圧や切羽圧力の変化に注視する必要があります。また、巨石が点在している区間の掘進では、カッタトルクの上昇や推進力の上昇などで掘進状態が不安定となるため、推進速度を落とし慎重に掘進する必要があります。施工時のリスクとしては、巨石周囲の土砂を過剰に取り込んでしまう場合や巨石破砕時の振動等により地表面が沈下、あるいは、陥没といったトラブルが懸念されます。
(1) 施工時の泥水管理
泥水管理は、「下水道推進工法の指針と解説 2010年版」(日本下水道協会)を参考に、粗砂や礫の破砕片が泥水処理機より排出される場合は泥水濃度を高濃度化して切羽の安定、崩壊防止を図る計画とし施工を行いました(表-3、写真-6)。
また、掘進完了時に残土量の計測、泥水量の変位を測定し、計画掘削土量に対して比較を行い切羽圧力や泥水品質の妥当性を確認し施工を行いました(写真-7、写真-8)。




(2) 掘進時の推進力低減対策
推進力低減対策は、泥水管理と同様に土質に応じてテールボイドに対する滑材注入率を変更しながら推進力の変化を監視することが重要であると考えます。
本工事においては、滑材注入方法としてアルティミット滑材注入システム(ULIS)を採用し、高粘性滑材「アルティーK」(一液性)の注入を行いました。
到達立坑より100m区間では、巨石混り砂礫層が掘削対象地盤であるため、固結型滑材「クリーンFDⅡ」(二液性)を注入する計画を行い、テールボイドの保持、推進力上昇の抑制を図りました(写真-9、写真-10、写真-11)。
(3) 推進路線の路面沈下管理
路面の沈下管理は、基線中心に1点と左右各1点、計3点を発進立坑から到達立坑までの間に約20mピッチで測点を設けオートレベルにて計測管理を行いました。
計測の結果、最大で3㎜の沈下を確認したため、施工後の裏込注入時に路面変位の測定結果を反映させ施工を行いました。




(4) 推進精度の管理
推進精度管理は、定められた基準値内に収めるよう管理基準値を設け品質確保に努めました。
土質条件の変更に伴い、特殊面板仕様の掘進機となったことから通常の掘進機よりも先導部機長が長くなったこと、掘進機と推進管の接続部をバンド固定したことにより、掘進機姿勢に対して推進管の追従(目地開き) が遅れ、精度不良に陥ることが懸念されました。
対応策として、ジャイロコンパス、液圧差レベル計によるリアルタイム計測と、管内手動計測にて掘進機前胴部、後方、推進管の姿勢を確認する計画としました。
その結果、概ね管理基準値内に収めることができました(写真-12)。

5.おわりに
今回施工を行った現場は、互層地盤と巨石の出現や土被りが比較的浅い区間の通過等、厳しい条件での施工となりました。
懸念していたローリングは発生しましたが、現場で実施した対応により掘進を早期に再開することができました。
また、推進力では、計画推進力 6,117kNに対して到達前初動推進力 3,224kN(計画比53%)、到達前最終推進力3,998kN(計画比65%)の結果となりました(図-7)。
日進量では、計画日進量2.7mを上回る平均日進量3.9mを確保することができました。
施工管理では、計画段階から細心の注意をはらい、また、予期できなかった土質変更協議、掘進機の変更への迅速な対応、そしてなにより、推進工事全体の管理を綿密に行ったことが、大きなトラブルも無く工事を完成させることができた要因であると考えます。



